どんぐり雑感
シネマ館


「スター・ウォーズ」


 
原題:STAR WARS
ジョージ・ルーカス監督作品
(1977年)

 この作品により、以後のSFXの流れが全く変わってしまった革命的作品。

 アナログSFXにおけるスタンダードをひとつ確立したが、あまりに技術革新が続いたため、このシリーズでアナログSFXの限界をも明示してしまったのは皮肉である。

 ただストーリーはとてもオーソドックスなスペース・オペラであり、どう間違っても近代SFではないので、要は特撮を何のために使うかをとても良く理解していた、という事に尽きると言える。
 そういう意味では、SF映画ではなく特撮映画(などというジャンルは、日本にしか存在しないのだが)に分類したくなる。もちろんルーカスはこの辺の事はよくわきまえた上で、あえてスペース・オペラを作ったのだと思う(まあ確信犯だな)。

 公開当時この映画の特撮部分は、特撮の事を良く知っている人ほど本当の凄さが判るというものであった。一般人が「凄い映画だ」と観ている時に、「なぜ凄く見せられるのか」を理解できる人にこそ、この作品は驚異的だったのである。
 さらに信じられないのは、この映画はハリウッドとしては低予算映画だという点である。そんな状況で特撮の新しいシステムを作り上げてしまうハリウッドという世界の、奥の深さを感じたものである。

 後年、ストーリーの魅力がうんぬん‥‥、という人も多くなったが、はっきり言ってこの作品にストーリー性を求めるのは間違っていると思う。もちろん当時のルーカスが作っただけあって、必要最小限のストーリー性は保証されているし、破綻しないよう注意は払われている。しかしこれはあくまでその「」を楽しむ作品なのである。

 SFとしてのストーリーなど、期待するのは間違いだ。これはあくまで「スペース・オペラ」であり「映像のセンス・オブ・ワンダー」を味わうための映画なのである。

 したがってこの作品はできれば映画館で見た方が良い訳で、その意味では[2001年宇宙の旅]の後継者と言えない事もない。もちろんストーリー的には[2001年]の足元にも及ばないのではあるが、その映像を見せるためにストーリーが存在しているようなものなので、やはり映画館で見る限り、それなりに興奮、熱中してしまうのである。

 またこの作品は、映画における音楽および効果音の重要性を、広く一般に知らしめた作品でもあった(SF映画のメイキングがはやるようになったきっかけも作ったのである)。
 結果として、ルーカスがジョン・ウイリアムスを起用したのは大正解である。現在SF映画のスタンダード・ミュージックと言えば[スター・ウォーズ][2001年宇宙の旅]は絶対にはずせないのだから。
 まさに昨今のAVシステムのために生まれたような作品である。

 余談だが、この映画以降、猫も杓子も使い始めるモーション・コントロール・システム(当時は製作者の名をとって、ダイクストラ・フレックスと呼ばれていた)は、間違いなく映画の流れを変えた訳だが、これは[2001年宇宙の旅]での撮影時にほとんど同じ構成のシステムが使用されており、ある意味では「単にそのモーター駆動をコンピューターで制御し、何度も同じ動きが精密に再現出来るように改良しただけ」とも言える訳なので、いかに[2001年]の時に優秀なスタッフがいたかという証明にもなっている。

帝国の逆襲へ
(文責・どんぐり1号)

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