西澤保彦的小部屋
案件4*『その上司、ナゾにつき』


 これまた『転・送・密・室』「神余響子的憂鬱」より。
 この話には、響子初登場以外にも、「チョーモンイン」のSF的システムの一端が公開されるなど、いろいろ濃いネタが詰まっている。

 中でも、かなりインパクトがあった登場人物がこの、響子や嗣子にとって直接の上司に当たる、チーフこと「コンスタンツェ」。
 何がどうインパクトあったかつーと、やはりこんな容姿でこんな衣装で、でも実は…というあたりかなあ。

 『転・送・密・室』の次に出た『人形幻戯』で、水玉画伯もまた「チーフことコンスタンツェ」の想像図を描かれていたのだけれど。
 それを見るまで、この「上司」が髪に赤いリボンを結んでいることをすっかり忘れていたりして。

 なので、ちと作中の描写とは、微妙にイメージが違っている…ような気がする今日この頃。


その名は神威・・・・
ごーじゃす 
「白いふりふりフリルのブラウス、金細工のチョーカー、ワインレッドのロングスカートにハーフブーツ。金髪巻き毛にアイスブルーの瞳も愛らしい、妖精と見まごうばかりに美しい、エレガント・ゴシック・ロリータ(以上、響子談)」

 コレが、「チョーモンイン」の日本支部管区局係長、自称「コンスタンツェ」、嗣子や響子の直接の上司に当たる人物だったりするから怖い。

 なにが怖いってあーた、嗣子たちはしばしば「一見中学生くらいにしか見えない」と描写されているのに、この「上司」たる人物、「十歳くらいの女子児童会長」などという描写があったりするわけで。
 身長も、嗣子たちの方が高いらしいときたもんだ。

 この『神余響子的憂鬱』で明らかになった「チョーモンイン」のシステム『ティルト』というのは、相談員他、そこで働いている人たちには「ある種の処置」がほどこされ、本来のものとはまったく違う外見になる、というすごいものらしい。
 しかも、チョーモンインの組織は一種の異空間(のようなもの)に存在するらしく、時間や空間の違いは問題にならないとか。
 …ミステリに出てくる設定としてはスゴいわな。

 よって、「見た目」中学生の嗣子や響子も、「見た目」小学生なコンスタンツェたんも、本当の姿はまったく別人である、ようで。

 だいたいこの「コンスタンツェ」はあくまで自称、この上司殿の(チョーモンイン上での)名字は、神威(こうたけ)というレッキとした日本名だったりするわけで。
 名前は日本名でも、外見がこんなんだもんなあ…。
うっとり
 さて、そんな『自称』コンスタンツェたん、このティルト処置によって施された自分の外見がそーとーお気に入りのようで、部下に指令を出すときも、「マニキュアを塗った自分の指先をうっとりと眺めながら」だったりする。
 …でも、時々飛ばすギャグがミョーにオヤジくさかったり。

 ティルト処置を解除されたこの人の本体、もしかしたらすでに作中に登場してる「誰か」なのかも知れないなあ、とついつい推理したくなったりするわけで。
 なんせ、作中でも明かされてるけど、名前は×××だしなあ。
お仕事ですよん
 というわけで、「お仕事」発令の図。
 チーフはいつでも、手鏡を眺めていたり、オフィスにある熱帯魚の水槽(に映っている自分の顔)を眺めながら指示を出すのでありました。

「わーい、きょおこちゃんと一緒にお仕事だ、嬉しいなっ」
「…オレは全然嬉しくないけどな」
「ハイハイ、それじゃ仲良く行ってらっしゃい」


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