娘さんいろいろ
異形のモノ



 手当たり次第もういっちょ。

 もはや、ヒトではない、のかも知れないモノについて…(まーそれを言えば、『火星物語』のクエスも人類とはちと違うし、「ポケモン」の世界のキャラクターも既知のヒトとは違ってるみたいだけど…ソコまで追及すると大変なので)。 

 
なおこのページ、便宜上「シャンブロウ」というSF古典名作短編の、大々的なネタバレを含んでおります。

 未読でなおかつ、展開オチその他を知りたくないという方は、これ以上画面をスクロールさせずに戻られることをオススメします(indexへお戻りの方はここから)。

 この短編を含む、C・L・ムーアの「大宇宙の魔女」(早川SF文庫)は長らく絶版でしたが、最近復刊フェアがあって、昔の装丁のまんま復活しています。
 火星人とか金星人とかが(概念として)フツーに存在していた時代の、非常に耽美で濃厚な一編です。機会があったら、是非ご一読ください。



誘いに惑わされて
 

さて。
 「漫画喫茶」の『山田章博』の項目で書いたとおりですが。
 氏が描くところの、美しくも異形な魔人王がなんとも魅力的だったので、この絵でそのまま「シャンブロウ」が描かれたらなあ、とフと思ってしまったのでした。
 松本シャンブロウのイメージも、当分消え去ることはないと思いますが。

 で、『異形のモノ』、シャンブロウ。

 外見こそ華奢な女性のように見えますが、「瞳孔のない黄色い目」、「無毛の頭」、「衣服に見えるのは体表の皮が垂れ下がったもの」。
 たどたどしく喋る言葉からは、何故この娘(のように見えるモノ)が火星の住人たちから迫害されるのかは伺い知れません。

たまたま通りすがってしまったために、この娘を保護することになってしまったのが、主人公のノースウェスト・スミスです。

 なにも食べず、ただひたすらおとなしく、宿の隅にいるだけの娘を不審に思いつつもそのままにしていたスミスが、ある夜に見た光景は…。

 体表の皮を、服でもまとうように体へ巻きつけていたシャンブロウ。
 体同様、頭にもきっちりと巻いていた、ターバン状の皮を、ゆっくりとほどき始めた時。

 無毛だったはずの頭部からひと筋ふた筋とこぼれ落ち、うねうねとのたくりながらゆるやかに伸びていく、赤黒い糸状の物体。


 この『髪』が姿をあらわし、伸び、増え、広がっていくシーンの描写の、濃厚なこと。
 ページ数にして2ページくらいのそのくだりを初めて読んだときは、もう息を詰めて先へ先へと読み進めていたことを思い出します。



 その、際限なくひろがっていく「髪」が、茫然としているスミスのところまで達し、ついにその足に触れたとき。 

「とうとう私の言葉でお話できますのね、いとしいかた!」

 口ではたどたどしい人語しか喋れなかったシャンブロウが、精神で直接語りかけてくる、この恐ろしくも美しいシーン。

 その『髪』で、人の精神に直接触れ、生命力を吸い取る怪物だったシャンブロウ。

 スミスはかすかに抵抗したものの、やがて屈服し、取り込まれ、なすがままになってしまいます。

 この後、スミスの相棒、金星人ヤロールが登場し、こちらも危うく取り込まれそうになったところで、地球に伝わる古い「メデューサ」の話を思い出し、それをヒントにシャンブロウを倒す、という結末に繋がるわけですが。

 ギリギリの最後までスミスの精神と繋がっていたシャンブロウが、死に行く中、自分でもどうしようもない、決して好んで殺戮を繰り返しているわけではないのに、と嘆くさまが伝わってくる、というラストの描写がまた、この異形の生物を「ただの怪物」ではないものにしている、ような気がします。


≪以下余談≫
 関節が目立たない「フォトジェニック・ジェニー」のボディを使用し、頭部はやはりジェニーのアイプリントその他を消し、目の部分はウラから黄色いガラスビーズを接着してあります。

 しかし、ボークスの「エレガント」もそうですが、このシームレス素材の素体、感触はいいけど弾力があって、ポーズづけには向きません。

 山田氏の「ロードス島」、ラスト近くの『玉座で片ヒザを抱え、討伐隊を待つ魔人王』のポーズを再現したかったんですが、各関節を90度以上曲げて保持するのが難しく、あきらめざるを得ませんでした…。


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